会期終了間際のロダン展(http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_0704/index.html)を観てきたのだ。「白と黒の世界」を銘打ち、あまり貸し出されることのない石膏像を数多く展示していることを売り物にしているだけのことはある。
 目玉《私は美しい》は、膝を折って丸くなった女を、男が担ぎ上げて首筋に口づけしている。肩から背中の肉付け、頼りない女の足の裏がとても素敵。遠目にはきのこ型といっていいほど重心が上にあり、バランスが物凄く難しそうな作品だが、目の前にあるのは手が滑ったら真っ二つになる石膏の塊。色も動きもない彫像が生み出す静謐さと動き出しそうな筋肉のうねりが相まって刺激的な緊張感だ。
 一応現物限りの絵画と違い、彫刻は型をとって同じ形を作るということがすでに制作のプロセスに組み込まれている。なかなかぴんと来ないんだけど。つまり、粘土で捏ねた塊を、ある程度保存の利く石膏像に型どりして、それを原型に、ブロンズ像を鋳造したり大理石を彫ったりすのだ。そこで、やっぱりもとの石膏から型どったものは一応オリジナル、というか作品の質は保証される。(逆に言うと孫の孫みたいな怪しげな彫刻も世の中には沢山あるということだ)以上はほとんど先生の受け売りの上澄み、だけどこんな話、ロザリンド・クラウスが書いてたの読んだことある気がする。彫刻って上手くいけば儲かるんです。

The Originality of the Avant-Garde and Other Modernist Myths (The MIT Press)

The Originality of the Avant-Garde and Other Modernist Myths (The MIT Press)

 彫刻は写真で見てもあまり様子が掴めないので、実際の作品を前にするのはいつもにまして楽しかった。周囲をぐるぐるまわったり出来るので、展覧会場自体もごちゃごちゃしないのがよい。本家パリのロダン美術館は、ハイソな邸宅に上がりこんで作品を見て回れる、あれまた素敵なところだったなー。何故か格好いい人が多かった。