本を返しに街へ出て、ついでに図書館で勉強してこようとおもったのだけど、図書館もストライキに参加してて駄目だった。何しに来たのか分からなくなって、学校近くのお気に入りのパン屋で田舎風バゲットを半分にしてもらって、それとチョコレートのマカロンを買う。マカロンというお菓子は口に含んだ瞬間に食べ比べをする気さえ溶けてなくなってしまうほど、その一かけ毎が感動で驚き。あんなに軽くてはかないのにじわりと豊かに美味しさが広がる。というわけで同じ値段なら学校の前のワゴンのヌテラ塗ったクレープよりはここのチョコマカロンを食べることを誓う。
 しかし、治りかけの風邪とか長引くストとか、生ぬるい強風とか、たちの悪いものが多いよ。マカロンには頑張ってもらわなくちゃ。
 気を取り直して続きでも考えよう。フランス語の作文の授業で作成中の恋愛小説。設定はみんなで考え、毎回大まかな出来事だけ定めてそれぞれ書いてくる。今のところ孤児のニコラはシャマリエ(クレルモン近郊の山の手)に暮らす名家の令嬢フランソワーズと一度対面したきりだ。ハッピーエンドにはならないだろうな。先生は「恋愛小説であるからには高まった愛は冷めなければならない」というし、大体、今のご時勢にニコラだなんて洗礼名を与えられた主人公を幸せにしてあげられるだろうか。