大きな机を斜めに置いている。白壁の真四角な部屋だから、ちょっと変なことしないと病院みたいになりがちなのだ。今までは、暖房が背中のほうになるように座っていたが、暖かくなったから反対側に引っ越した。目の前に窓、光は左前から差し込む。
 顔が焼けるかな。そんなに陽の高いときに家に居ることも無いのだけれど。平日仕事している美術館では、仕事場環境は申し分ないが、トイレの照明がなんとも景気の悪い蛍光灯である。それで、いつも鏡を見てはがっかりして、「これが日本に帰ったときの室内のお前の顔よ。」と言い聞かせてる。
 「女の子って、上手く行かんことあった時いきなり前髪めっちゃ切ったりするんやろ?」
と言われたのは数年前で、そうかもと思った。でも私は、上手くいかないと切りたくはなるけど踏みとどまるときの方が断然多い。でなきゃ頭が成り立たない。反面、順調でも切りたくなることが少なくない。
今、前髪切りたい。めっちゃ切りたい。後ろも実はちょっと切りたい。大体、京都では自称フレンチボブ(美容師曰くぱっつん、母曰くおかっぱ、友人曰くこけし)だったのに、こちらで、まるでフランスにいる日本人女のコスプレみたいに黒髪ストレートロングもどきってのは、フジタみたいな気がして若干罪悪感が無いでもない。けど多分変えない。理由はたいしてない。敢えて言ってみるなら、なんっか楽しいんだよな、久しぶりに髪が長いってのも。それにこれ、乾燥した大陸では自由な行動を妨げることもない。