これは先週の月曜かな、夕方七時とか八時くらいに東西に走る通りに出ると本当に日差しが容赦ない。
 さて、フェスティバル・パリシネマは、本日にて一応六本観たのでなんとか元は取ったということに。風邪ひいたのは想定外とはいえ、素晴らしい戦果とはとても言えないわね。ただ、こうやってパスがあると、あんまり考えずにふらふら―っと劇場にいって「拾いもの」に巡り会うことができるのは最大の魅力である。なにしろ家から十五分も歩かないうちに四つ五つの映画館に当たり、よく行く図書館のうち二つの扉から出てからバス停までの間に映画館があるのである。やっぱり普段から見放題パスを手に入れるべきかー。
 昨日面白かったのは、ナディヌ・ラバキによる『Et Maintenant on va où?(さてこれからどっちに行く?)』、カンヌのなんかの部門に出てたやつらしく、監督とプロデューサーが来場、九月の公開に先立っての上映。二人とも迫力のある美人で超格好良かった*1!!とてもよくしゃべる紹介の、これまた女性によると「女たちの女たちによる女たちのための」おとぎ話ですって。以下はネタばれあり。
 舞台はキリスト教徒とムスリムが共存を決めたレバノンの村。どうやら昔宗教上のいざこざで若者の半分くらいが命を落としたらしく、村はずれに両宗教の墓地が拡がる。以来、クリスチャン・ムスリム双方の女達による徹底した情報&感情操作で平和が辛くも存続していく。
 つまり、村に一つのテレビやラジオで外界のその種の情報が流れ始めたら金切り声で男どもの耳に入らないようにし、男どもがいざこざを起こしそうになると、或いはマリア様の奇跡を演じたり、へそくりをはたいて都市からダンサーというか娼婦のお姉さんたちを呼び寄せて歓待させ、彼女らをすっかり仲間に引き込んだらスパイとして男どもの雑談を録音させ、男の子が一人殺されて緊張が限界に達し、いざ衝突が起こる予定の前日に、ハシシュを混ぜ込んだケーキとお茶とベリーダンスで彼らを一絡げに無抵抗状態にしておく間に裏で武器を没収して地下に埋めてしまう。
 「人種とか宗教とかが争いの種だって皆いうけど結局、男どもが阿呆であり、にも拘らず自分が馬鹿以外の何物かだと思ってるのが悪いんじゃん?」という素敵な信念を透徹させることで、重いテーマをコミカルに扱うのに成功してる。神を畏れぬブラックユーモア満載で会場を埋める女性たちともども声を上げて笑う。その一方で深刻な場面もあるし、度々入る歌え踊れのミュージカル風の一こまは楽しいし、孤立した村の風景は美しい。まあ、最後に女たちが改宗したふりするあたりなどは、あんまり寛大でない神様を信じてる人にとってはスキャンダルかも(帰りにめっちゃ怒ってるおばさんに遭遇した)。

*1:『キャラメル』に続いて彼女自身も主役の一人を演じているんだけど、なんかもうたくさん顔が並んでるのをぱーっとカメラでなでた時にどうしてもその顔の行方だけを追ってしまうくらい印象的な顔なの、あんな美人でなおかつ自分が映画撮るとかって一体どんな気分がするもんなんだろ??