どこでしょう??などと言っておいて更新が滞ったのはまったく情けないことだが、実は二月中旬に寒波のパリを抜け出し、シチリアを旅行したときの写真でありました。
 ライアンエアというヨーロッパの人にはおなじみのとおーっても安い飛行機で片道二時間半、往復50ユーロくらい。しかしながらこのとっても安い飛行機は、パリ発と書いてあっても実際にはバスで一時間以上かかる近郊のボーヴェから飛ぶ。この小さい町については、以前紹介した(みずやそら)私が恋に落ちた未完の大聖堂があるので余裕のある人は素通りといわずに街を散策するのをお薦めしますが、今回は素通り。また、このライアンエア、格安につき「機内持ち込み手荷物一個」10kg以内という恐ろしい制約が…。大きい荷物を預かってもらうには追加料金がかかるとのことなので、3日から2週間までの旅行に愛用しているフラミンゴ模様のボストンバッグに、お散歩用肩掛け鞄を詰め込み、何とか潰して機内持ち込みokサイズにした。ところがうっかりしていて化粧水ボトルが100mlを越えていたのでその場で処分されてしまう。丁度ヴァレンタインデーだったので管理官のお姉さんは「おねーさん、液体は入ってませんよね?シャンパンも駄目よ?でも、今日はちゃんとシャンパン飲むのよ〜」な感じで非常にご機嫌だったのだけど(きっと夜に素敵な用事が入っていたに違いない)、容赦はなかった。
 トラパニという西側の港町に付き、その日は遅いので近くのピッツェリアで矢鱈めったら安くて大きくておいしいピザを当然のごとく食べ過ぎ、次の日にパレルモカターニャで乗り換えて東南の丘の斜面に造られたバロックの町ラグ―ザへ。
新市街の端から宿のある旧市街まで、暗い中をカフェのお姉さんやらバスの運転手さんやらに助けられて辿りついてドゥオーモ・サン・ジョルジョがある旧市街イブラへ。ちなみに最初の写真はこのドゥオーモのファサード(正面の壁)部分。

 夜のドゥオーモと、まばらにレストランの灯りが見えるシーズン・オフの街を散歩して、今までに食べたことのない美味しいパスタを食す。からすみのパスタが10ユーロくらいという値段の魅力も霞む程、とにかくもちもちして美味しい麺だった!

 次の日は朝ちょっとした事件の後、前日バスでくねくねと来たルートを二時間弱程かけてゆっくりと散歩。本当に迷路のように曲がりくねっているのだけれど、そこかしこでさっと視界が開けるので閉塞感はない。そして、角を曲がるごとに曲がりくねったバロックの装飾が惜しげもなく施されていて、裏さびれて時に風化された建物の肌合いと組み合わさると、フランス・バロックの華やかさ、ローマの豪奢さとはまったく違う、少し哀しい味わいがあって素敵な町だった。


 イタリアを始め地中海沿いの町は、こんな風に丘の斜面に沿って作られたところが多く、基本的には川の流れる谷間に町がある日本育ちにはそれだけでかなりエキゾチックな印象を持つ。以前挑戦したブローデルのMéditerrannée(『地中海』)の最初の方に書いてあって納得したのは、この地域では低地はすなわち湿地であり、特に暑い時期にはマラリア蚊を始め疫病の発生源になるなど、衛生状態が悪くてとても定住には適さなかったとのこと。バスの車窓からは今でも手製と見える白い石を積んだだけの柵で仕切られたオリーヴ畑が斜面に広がっていて、定石通り度々崩れている。今はすっかりヴァカンス地に代わりかけているが、この辺りで暮らすのは今も昔も楽ではないのだろうな、と思った。

La Mediterranee T01 (Ldp References)

La Mediterranee T01 (Ldp References)

〈普及版〉 地中海 I 〔環境の役割〕 (〈普及版〉 地中海(全5分冊))

〈普及版〉 地中海 I 〔環境の役割〕 (〈普及版〉 地中海(全5分冊))