石井桃子訳『くまのプーさん』に、「木曜日おめでとう。」という不思議なあいさつが出ていた。なんとか腑に落ちたのは学校で英語を習ってしばらくしてからである。発見したといっても、発音が子音一つ違いの駄洒落、というだけなので、実はもっと秘密があるのかもしれない。何しろ、不思議な言葉が多くて、ちょっとやそっと意味不明でも、そこまで引っかからないのだ。
プー「おはよう、イーヨー」 イーヨー「お早いならばさ」、なんていうのもある。 
多分、Good morning!にIf it is a good morning..くらいなのだろうけど翻訳の方がずっとお洒落だと思う。
 木曜日といえば、ミステリーなら、ミス・マープルのお茶会は木曜日だった。決まった曜日に集まって謎解き、なんて、それだけで秘密めいている。涼しくなるとやってみたくなってしまう。曜日はやっぱり木曜か火曜かな・・。
 今日、友達の家に転がっていたのをぱらぱらと読んだ、江戸川乱歩の短篇は、ありふれた話ではあるが、朝にはちっときついインパクトだった。題名は記憶が曖昧だが、「赤い部屋」とかなんとかだったと思う。暇人が刺激を求めて集る緋色に装飾された非日常の空間に、今夜の男は、あんまりに普通な日常の、計り知れない闇の可能性を放り込むのだ。いってみれば紅色と灰色のコントラスト、まあ、朝読むものではないな。
 赤、とはいってもねっとりエロティシズムではない、とはいっても死人が出るのだから爽やかでも困るけれど、われわれ姉妹が「英国紳士的ユーモアがある」と認めた好感度ミステリーが、こちら、ミルンの『赤い館の秘密』。

赤い館の秘密 (創元推理文庫 (116-1))

赤い館の秘密 (創元推理文庫 (116-1))