フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)

フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)

ここに紹介致しますは、大陸を越えて更に西に愛蘭のジェイムズ・ジョイス、とにかく柳瀬尚樹さんの訳がはちゃめちゃで、わからんけれど面白い、のかどうかもわからないしそもそもわかるモンなのかも怪しいけど、英文やってる人なんかに言わせると物凄い原文の深みを伝える名訳だそうで、私も汲めども尽きぬネタを発掘すべく精読したら面白いんだろうなあなどと思いつつも、あれ、さっきまでどこ読んでたんだったっけ、まあいっか少し前の段落から、などと歩めど進まず、半端に鮮明なイメージのはぎれの連なりが時間を埋め尽くしていくばかりで、この言い回しはどこかであったことがあるなんて思っても、さてすでに読んだところに戻ってしまったのか、それとも違うソースから記憶していたのが掘り返されたか、本当は少しでも引用して雰囲気をお伝えしたいが、この日記にそこまでエネルギーと時間を架けてはいけない自分との約束なので、多少言葉遊びに酔いたい方は書店で立ち読みしていただくことにして、なんていっているうちに、パンツが宙を飛んでいる!!
 そして、カツ丼は、さらにさらに重々しく運ばれていく!!
 本当は順番は逆で、ここで枕に使った本のほうを、昨日劇唐ゼミ☆の『ユニコン物語〜溶ける角篇(台東区篇)〜』を見た後にふと思い出したのだ。
 厳密にいって、ほとんど共通点はないのだろうけど、磨き上げられた言葉と演出と、前列だったので他にも色々とほとばしるものを、これでもかと浴びせかけられて酔った印象が強烈だったのだと思う。役者さんは信じられないくらいパワフルで、一瞬一瞬が濃い。些細な演出の一つ一つに飛びつきつつも筋についていくために泣く泣く別れ、それでも最終的にはくっきり一本通るものが残って、凄く肯定的な気持ちになれる。
 何より、観客同士・観客と演者の間に、ちょっとあんまりないような、対等な、共犯感覚、(恥ずかしい言葉で言うなら共同体意識とでもいおうか)が通っていて、奇跡に立ち会ったような気分。学校の跡地にたった狭いテントにくっつきあって座り、間近に観る、という状況もさながら、役者さんたちなどの誠実で倦まない姿勢によるところが大きいのだろうな。ちょっとうらやましくなってしまう。
 とにかく濃密で素敵な夕べでした、また舞台に出会える日を楽しみにしつつ。