一日フランス語に接していた気がする割に仕事が捗っていない。
 思うに、イヤホンなりヘッドホンなりで音楽を聴くってのは、「邪魔されたくない」という意思表示として機能する面が多分にありますよね。少なくとも半分は別世界にいる。不快な騒音はある程度遮断され、自分が自分だけのために選んだBGMの流れる移動式テリトリーにいられる。当然現実に自分を取り巻く世界に対しては集中力が落ちる。で周囲としても、見ず知らずの他人の中でも、わたしたちのいる場所の中では関係の希薄な存在として、捉えているところがあるんじゃないかと思う。どのような音楽の中にその人が泳いでいるのかはわからないし、わからなくていい。更に言うと、ひょっとして音楽など聴いていないのかも知れない。さて、電車の中(でもどこでもいい)、自分の音楽の中に没頭して他人からのかかわりを拒否するポーズをとるように見せかけ、実は隣の会話を一言一句聞き漏らすまいと聞き耳を立てていたら?ここで、昔、ソ連ゴルバチョフが、外交上の大事な交渉などで、英語が理解できるのに、逐次通訳を立てていたという話(出所忘れたので怪しい)を思い出す。相手が油断しきっているだけに効力は二倍、すこし怖い話だと思う。
 そんなことを、音楽が止まってしまったiPodのイヤホンを付けたままぶらぶらと買い物しながら考えたのさ。