夢を見ている男たちを揺り起こそうとする夢を見ている男たちをめざめさせる夢を見ているのだ


 ・・小さな子供が山を駆け上がっている。早くみんなに追いつかなきゃ。尖って折れた笹の枝が行く手を塞ぐ。のどが渇いた。リュックサックを取りに帰っていたら水筒を忘れてしまった。追いついたらお茶を分けてほしいのに、なんでみんなあんな早くいっちゃうんだ?暑い。舌がくっつくよ。水が欲しい。・・あれ、わたし机に座ってる。教室だ。夢を見ていたのね。先生、お水飲みにいってもいいですか?のどがからからなんです。はい、ひとりで大丈夫です。教室を出ると長いみどりの廊下だ。保健室は同じ階にある。でも、おかしいな。小学校には教室に水道があったと思ったけど。保健の先生に言って水飲み場に連れて行ってもらう。銀色の蛇口をひねって、もう少し・・・・・暗い。わたしは布団の中にいる。頭が、胸が、熱くて苦しい。頑張って、起き上がって、水を・・・暗い。焼け跡。焦げて朽ちた黒光りする木が積み重なる中にところどころ炎が残っている。熱い。妹が泣いている。水溜りに足先が触れた。ああ水。水が飲みたい。もう、でも歩けない。・・明るくなる。夢だったんだ。黄色とピンクと水色のパラソルの下、オレンジジュースとかき氷がすぐそこに。手を伸ばして・・・・
 夢は多層。一気に落ちるけれど、戻る時は果てしなく夢から醒める夢を見続ける。現実に達するには飛躍が必要だ。けれど目的地の半分で次の夢に乗り換える矢の飛翔はあまりにも遅い。

 マムルーク朝下のカイロ、血と塵と埃にまみれて悪夢に囚われて狂う。今途中なのでまだ夢から醒められないまま。