HOME(通常盤)今回の旅のお供。ミスチルは甘ったるくて好かんと思ってたけど、こちらに持ってきたのは正解。箒星な気分が不思議にしっくりきた。i-Podの充電手段を忘れて、本当に駄目になったときのために精一杯けちけちしながら聴いていた。
この写真はニュルンベルクの教会前広場にあった塔。柵についた金の輪を三回回すと幸運に恵まれるんだって、とそこにいた家族連れにシンプルな英語で教えてもらってまわしてみた。ミュンヘンから新幹線ICEで一時間の中世の街を訪れたのは全くの気まぐれだったんだけど、一瞬、ぽっかりと風が凪いだような現実離れした素敵なひとときでもあった。
 一都市最大二日という過密スケジュールで、天気も良くないからまともに美術館を巡っていて、それはそれで感動の連続ではある。でも、ミュンヘンに夜行で着いて、一度止まると動けなくなりそうだからアルテピナコテークに入って一日うろうろして、(これも良かったんです、本当に!)夜に少し飲んで、次の日も他の美術館を訪れて、突然、自分が何か宿題を終わらすように予定通りの日程をてきぱきこなしてるのが詰まらない気がした。折りよく空が見え隠れしだしたので、街をそぞろ歩き。
 日曜なので店は完全に閉まっているが、ところどころ、名所跡で楽器を演奏している人がいて、それがかなり本気で好きでやっているアマチュアという感じで上手いし好感が持てる演奏なので、その人だかりを辿ってゆく格好になった。バイエルンの王様の居城にて、幾何学模様の庭の中央のディアナに支えられた東屋で、バンドネオンとヴァイオリン。その前の広場にあるローマの神殿風の記念建造物の横っちょには高校生か大学くらいの男の子がクラリネットでちょっと生意気なくらい色っぽくジャズを吹いていた。ドイツ人の真似をして、アイスを食べながらしばし聴きいる。大通りには、マリンバでバッハを立て続けに披露するおじさん。ありとあらゆる色の毛糸を使ったニットを着ている。駅に近づくと、石のアーケードでヴァイオリン・コントラバス・フルート・オーボエのカルテット。有名で耳に心地よい曲を自信もって楽しそうに弾いてて、上手い。ここでゴールだ。敢えて禁忌を犯して、どこにでもあるスタバでどこにでもある本日のコーヒーを一服。さて、どうしよう。すでに夕方。そこで、駅まで来たことだしドイツの新幹線になんとなく乗ってやろうという気になる。ニュルンベルクというのが見えて、それほど遠くないことを知り、ミュンヘンだよ?バイエルンよ?ワーグナーよ?Pourquois pas!?
 で新幹線を駆っていってきた。その日もミュンヘンから夜行だったので滞在時間はわずか一時間ちょっと。それでも町全体が完成されたレンガの小世界で、陽の傾く頃特有の甘くゆったりした空気が流れる中を何にも強制されることなく散歩した。手を変え品を変えのゴシック装飾には思わず感心して笑い出すと、そばを通りかかった人が私をみて笑っていた。
 そうそう、帰りの電車に乗ろうとしてホームに入ると、なぜかいつになくぴりぴりした雰囲気で若者が多い。しかも一様に短髪で、顔にあざがあったり、松葉杖をついている者もいて、なんなんだろう、と観察していたら、みんな同じようなバッグを持っているのですね。カーキ色で装飾が一切なく、でかい。ああそうか、兵役か軍隊の夏季休暇の終わりか何かなんだろうな。ところで、ゲルマン系あるいは北方系の顔は好みかと聞かれて、うーん、そのときは、ラテン系のほうが親しみが持てるかなー、っと思ってたけど、近くでしゃべったりしてるのを観賞していると、なかなか素敵なものだ。あのいかにも冷淡なハンサム顔でちょっとはにかんだような表情を見せると、あ、ずるいな、と思ってしまう。