ヒマワリノタネ。最近中国人仲間(といっても私は日本人だけど)での合言葉っぽくなってる。旧正月に食べたとき、名前を教えたらそのややこしさがウケた。力使う母音と曖昧な子音で一粒に七音節である。中国語ではクォヮッツというそうだ。ナッツ系という感じでしっくり来る。これが、ポテチの入ってるような袋一杯にずっしり入っていた。
 以来、会う度「あれ、何て言ったっけ、イマワリド…」と訊かれては、最も非実用的な語の一つを根気よく訂正している。なかなか。
 でも、なじみのない音の組み合わせって面白いもの。自分で適当にべらべら言っても絶対生まれないような音が意味を持っているなんて魔法みたいなものだ。小さいときは、「アイネクライネナハトムジーク」など何て格好いい言葉なんだと思った。スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス、スリジャヤワルダナプラコッテアッサラームアライクム覚えた覚えた。高校世界史なんて呪文の宝庫、マルクスアウレリウスアントニヌス、ソンツェンガンポ、ラインハルトフォンゴールデンバウム…。思えば何でラテン語は上手くいかなかったんだろう。
 では、フランス語では?おそらく喜ぶべきことなのだが、もう音の組み合わせだけに新鮮な感動を抱くということは少ない。その上で、フランス語らしくて好きな響きを挙げるなら、ラメディテラネ(La Méditerranée;地中海)とルミストラル(Le Mistral;南仏特有の北風)。ミストラル姓に出会ったら結婚してもいいと思ってるけど幸か不幸かまだ見たことがない。