ほとんど意味が無いからやめようと思っていることの一つに、アイスの溶けたところから食べる癖がある。溶けたアイスが好きなのではない。溶けていない、アイスらしいアイスを最後の一口に頂きたいのだ。
 すると、皿の縁から溶けてくるのが気になって仕方が無い。スプーンを滑らせて応急処置をする。よし。ところが、気づくと反対側に見苦しくとろとろしたアイスが溜まっている。とろとろは更に周りのちゃんとしたアイスにまで触手を広げる。見過ごしてはおけない。素早く匙を操作する。…。

 お察しの通り、これは無駄な戦いである。アイスは玉ねぎよりたちが悪い。結局、溶けたアイスばかり食べていた印象が残る。
 選択の余地の無いコーン入りのアイスならよいのかというと、今度は、最後にアイスの入っていないコーンを持て余す恐怖のため、のっけから上に乗っかっているアイスをコーンに詰め込む作業に熱中する羽目になる。まったく世話の焼ける食べ物である。ただこれも愛ゆえのことです。
 アイスだけで済めばいいのだが、ヴァリエーションは数限りなくある。パンオショコラは周りから(チョコ棒の部分を残して)食べるのが幸せだし、おにぎりの最後の一口に具が無い、あるいは更に悪いことに具が固まっているなど許されない。結果ほとんどおにぎりのおにぎりたる所以である握りが崩壊しかかってしまう。
 勿論こんなお行儀の悪いことは自分だけの秘密である。公衆の面前でスイカの先っちょを最後に残しておいたりすかさずカマンベールの皮を齧ったりは出来まい。アイスは…、ばれてないよね?