いよいよ残り僅かになってきた。今週が終わったら、クレルモン生活もあと二週間。来週末には北の彼方から友達がオーヴェルニュに訪ねてくる(予定。ちゃんと来てよー!)。六月末に寮から退散し、パリを拠点にチェコ、イタリアに別々に旅行して七月末に帰国予定。
 残りわずかだと、何となく非常時気分で、財布の紐がそこはかとなく緩む。色々と物入りな時期にこれはまずいなあ、と思いつつ、これが食べられるのもあと少しか、と木苺のムースを買ってしまったり、書店で可愛いお料理本を買ってしまったりする。下はオーヴェルニュの文化財の一つ。今、研修先では、こう写真を加工したりして財団のポスターを作っている。

 ところで。(閑話休題、とかってこういうとき使うんだよな、なんか恥ずかしいからやめとくけど)
 あまり感傷的にならないうちにまとめておきたいのは地方都市への留学の是非についてである。
 このブログの上では露ほども感じられないかも知れませんが、私、何でパリに来なかったんだろうって睡眠に支障をきたすほど後悔したことは二度や三度ではない。国立図書館とか美術史研究所の荘厳さにうなされたり、ルーヴルの無料パスをいとも簡単に入手できたことを思い出したり、調査に来て友達になったソルボンヌのパリジェンヌのあまりの可愛らしさに衝撃を受けたり。
 この過剰に刺激的で文化の濃厚な首都に比べ、田舎のよさは、人と接する時のストレスが少ないこと、物価がそれほど高くないこと、家探しが困難を極めないこと、同郷人とのお付き合いをしなければいけない気分にならないこと、といった、どちらかというと消極的なよさ(「…ないこと」ってやつ)である。おまけに私はちょこちょこパリに行ってはいい思いさせてもらっから(願わくはこの先も!)余計にそう感じるのだろう。
 とりあえず、博士に入ってから留学される方には、文句なく大都市をお勧めします。資料が揃う反面、遊びの誘惑も多いけど、研究で食べてく覚悟の出来ている人にとってはそんなのは屁でもないはず。なにより同国人ネットワークで、大学にとらわれない研究者同士の深い交友関係を築くことが出来るのは、おまけっぽいけどかなりのメリットではないかと、これは隣の庭を見る限りでの感触です。
 私の場合は、修士休学で来ているのだけど、どうだろ?「もしこうだったら…」なんて考え出しても切りもなし仕方もないくらい複雑怪奇で一点ものの時間を過ごしてきた上ではとても判断できない。
 強いて言えば、パリは恋人、クレルモンは家族って感じだった。(これは白雪姫式の比喩か赤頭巾式か!?)
 両方上手く行っていたら最高だけど、上手く行かない時のその上手く行かなさを含めて。特に、意味なく半自動的に安心してしまう場所とか、家族のようなひとたちとかに出会えたのは幸運だった。どきどきし続けられる対象は素敵だけど、安心は一方向ではありえないから余所者にとっては、より難易度高い気もするので。
 感傷的にならないようにって言ってるのに結局のろけてしまったわ。失礼いたしました。