とある教授(心理学)曰く。
 これからのことはね、大事だから暗くならないで、悩みこまずに決めましょう。とりあえず頭だけじゃなくて体も動かして、進みながら考えることです。芸術も一種人間に必要な毒だから、楽しみとしてずっと考えていくことはいいんじゃないかと思いますよ。真善美は人間を猿とわけてしまった毒ですからね。本気になり過ぎると危険です。
 とある教授(音楽)曰く。
 ぼくそういう「美しいものが好き」とか「芸術で豊かな人生」みたいな考え方って大っ嫌いなんですよ。結局余暇に潤いをみたいなこと言ってるとお金で換算して利益を上げないイコール役に立たないとみなされて一番最初に切り捨てられるでしょ。音楽とか芸術とかってそんな生ぬるいものじゃないですよ。豊かさってっても、いったら憲法で保障されてる最低限の豊かさのことで本当に必要で不可欠なものですよ。芸術は計算できないから心理学ではわからなくて少し僻んでるのかなあ、彼らは猿のままだったら人間は幸せだったと思ってるんでしょう?
―二時間の休憩をはさんで正反対な方向性を示され、今までもてあそんでいたもやもやが逆に居場所を得た気がした。どちらも正しい、という言い方はこの場合には相応しくないだろうけれど、間違ってはいないのは間違いない。だから京大って面白い。要はなんだかすっきりしてしまったのだ。
 おまけ、バイト雇い主の料理人さん曰く。
 テレビくらい見といた方がええで。中庸っていうやろ、あんま極端なのはよくないんやて。友達や恋人にならええけど、そうじゃなかったら普通の人とそう違わんように見えるようにカムフラージュするって大事やで。
―いちいちごもっともだが、「普通の人とそう違わんように」見えてないほど重症だったとは知らなかった。あら大変。
 最後、(だが重要性が最後という意味にあらず)父曰く。
 好きなことやったらいいんだから。考えていいようにしなさい。今、本当に困ることがあるとしたら結婚されるくらいかな。支度金出ないから。あ、駆け落ちならいいけど。