聴覚はデジタル、視覚はアナログ、という話を聞いた。音楽は時間とともに、視覚イメージは一瞬で全体が把握される。
 不思議とぴんときたのは、前日に日本美術の先生が、デジカメの映像とフィルムで撮影したスライドの質感の違いのことをお話しされていた時に考えることがあったからだ。なんでも日本画では顔料の粒子が粗いから、デジタルの画像にしてしまうと、特にパソコンを通して大画面で映すと、ざらざらとした質感までは出せず、現物を前にした時とは大分違った感じがするそうだ。確かに、名前もつけられない微妙な色を原色の光の点に変えてしまうのだから、日本画に限らずとも絶対同じものにはならない。眼の方も、ここからここまでの範囲はこの色、ではなく、その微妙な全体の調子をみるわけだから、画素数が大きくなっても見方のシステムが違うので違和感も残ろう。そこで、なんとなく、絶対音感みたいな画像のとらえ方があったらどうだろう、と考えてみた。色味を細かくて厳密な区分で認識して、それとちょっとずれたら、音程が狂っているのを聞かされたような気分になる、というもの。と考えてすぐに、日の差す方向や時間が違うだけで質の悪い複製と現物くらい見え方が違って見えるだろうから、こんな疲れることはない、と思いなおした。それに形が付け加わるとなると気の遠くなりそうな話だ。直観像記憶は一瞬でイメージを写真に撮るように焼き付けるというが、そんな便利な眼がなくても、一度見たものはなんとなくはわかって、ある程度環境が違ってもそれと認識することができるのだから、人間の目と頭のつながりっぷりは改めて面白いなーと思いました。