週末は東京で、確か二週間前にもあった妹と、にもかかわらず尽きない話など。沖縄料理を食べたり、春服を批評したり。
 思いの外よかったのは西洋美術館で開催中の『フランク・ブラングィン展』(開催中の展覧会|国立西洋美術館)。1867年ベルギーで生まれたイギリス人、ウィリアム・モリスにも教わった職人肌の絵描きで、パリに渡ってビングの店「アール・ヌーヴォー」の装飾を任されるなど、装飾・絵画、加えてリトグラフエッチングなどで膨大な作品を残す。しかも長生きする。
 思いの外よい、と特に感じたのは、まずは油彩画。画面のかなり上方に地平線を設けて見下ろすように描かれていることにより、描かれる人物との間には距離を残しつつも、全体はこちらに迫ってくるような独特の構図に破綻がない。多くはレリーフ状に配置された(横一列並びで立ってる集合写真を思い浮かべて下さい、で一人一人が各々の動きをしている)男性労働者の腕やら肩甲骨やらが素直に美しい。作品によっては、それが写実的に巧妙に描かれているので、絵がちゃんと描ける人なのがわかるのだけど、さらに面白いのは、作品によって筆遣いや色合いががらりと変わるところ。特にオレンジ、緑などの鮮やかな色を、くすんだ茶系のリアリスティックな描写に並列させてパッチワークのように乗せてしまうのは、かなりお洒落だ。ボリュームたっぷりの絵の具を大きめのタッチでぺたぺたと置きながら、逐一その場所に説得力を感じさせてしまうというのは、なかなか凄いことで、絵具の上を目が滑って行く快感がある。大判のエッチングのインクの滲みなんかも面白い。見物客も少ないし。
 後学のためにスライドトークも見てみたが、若干作者についてはわかったけど作品については特に目からうろこはなかったかなー。展示をやってる横で、スライドを敢えて見せるって時に、画像が悪いのは問題外だが(試写して調整するなり照明を落とすなりしたらもっと良かっただろうに)、キャプションみたらわかることを噛み砕くだけでなくて、そのトークとしてどれくらい面白くするかを狙いを定めて構成されていたらもっとお得感があると思った。
 最後に下らぬことですが、この展覧会を見に行く前には、是非、ガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』を観て。ホームズは1854年くらいの生まれとされており、ベーカー街に事務所を構えて活躍するのが1880年代から。というわけで、完全に同世代ではないし、同じころ生まれた人々はたくさんいるのだが、あの造船所のシーンを見てから本展覧会を観れば、「ああ、あれね!」ってな同時代人気分になれること請け合いです。それから映画のモノクロームなタッチとこの絶妙な色彩感覚を楽しみましょう。