東京から帰ってきた。なんだか行くたびに楽しくなる、東京。大体は、荷物を少なめにしているとか、履いていくのと別にもう一足靴を持っていくとか、とにかく自転車のない土地で生きるすべを漸く学んだということなんだが。一週間とか二週間とか滞在して図書館通いとかしたら案外騙されて好きになっちゃいそうかも。ちゃんと区域によってカラーがあるし、土地に起伏があるお蔭で眺めの変化が心地いい。今回は割と輪っかで言うと上の方を動いていて、山手線から見える風景が鬱蒼と緑りいので情趣がある。
 空き時間に、少し遠出。折角千葉方面にいるのに…とは私も突っ込みいれつつ、横浜美術館の『ポンペイ』展。最近ローマ系で幾つか良い展覧会に出会ってしまっていたからか、なんとなく欲求不満が残ってしまう。それから町田市立国際版画美術館「挿絵本の世界」。大きな公園の端の落ち着いたたたずまいの美術館で、15〜16世紀の写本聖書から19世紀のファッションプレート、絵本まで。ゆっくり文字まで目で追って楽しめました。

 トンネルを抜けると・・・


 お天気が良かったからもっと写真撮ったんだけど、容量オーバーみたい、残念。
 三菱一号館美術館の『マネとモダン・パリ』展、新幹線降りた足で行ったがとんでもなくお洒落な場所。しいて云うなら床に靴音が響きすぎるとか、天井が低いとか、あとはいかにも建築全く勉強していないフランスかぶれ的な意見ですが、素敵な階段が欲しい…。でも庭園美術館みたいな感じに、デートにお薦めのお屋敷美術館という感じだ。展示も予想より満足だった。
 しかしあれねえ、私はいっつもえらい先生に折角紹介してもらったりとかいう貴重な機会に出会うたびにこう、静かなるパニックに陥り、笑顔を浮かべたまま狼狽しきって全く上手く話せずに、後になってからああ、こんなことも聞いてみたかったー!と非常に後悔することしばしばである。まして人脈つなぎみたいな、礼儀正しく謙虚にかつ気のきいた質問でさりげなく自己アピールみたいなことができない。アカデミックな場で通用するちゃんとした社交性を身に付けたい、というのは、世間話でなく専門的な話題でアドリブコミュニケーションが出来るようになりたい、ということ。ある程度知的な話題を、考えながら適切にしゃべりたい、というのは外国語でも自分の今の課題で、そう考えると本当に、日本語なら上手くやれるってもんじゃないなあと思う。でもまあ、昔は一対一でふつうに話したり世間話でさりげなく警戒を解いたりといったことさえ無理だったことを考えれば、こんなのは訓練次第だろう。願わくはその機会がこれからも与えられますように。