ふたたび昨日は日中引きこもって、夜少しお出かけ。
 今日は例の美術館および歴史的建造物無料の日につき、午前パンテオン、午後ポンピドゥー。パンテオンは19世紀末のフランス画壇のアンバランスさをみるのには打って付けだからと日本にいるころからお勧めされていたのだが。
 うむ、地階にはシャヴァンヌ、ジャン・ポール・ロランス、カバネル等など1874年に注文を受けた、当時公的に大成功してた画家による、やれシャルルマーニュだのジャンヌダルクだの、クローヴィスだの聖ジュヌヴィエーヴだのというとてもフランス万歳パリ万歳な主題の大画面の装飾画に加えて、祖国のために死んだ作家たちにささげる記念碑とか祖国のために死んだ英雄たちとか革命の名もなき犠牲者たちとか以下同etc.etc...、一言でいって非常に臆面もなくナショナリスティックな場所なのでした。恥ずかしい、というか何かもう付いていけん。
 地下墓所にはヴォルテールとJ.J.ルソーに始まり、市民のために尽力した著名人たちの墓。外見からみて、すでに「こんなところに埋葬されるなんて考えただけでぞっとするよねー」みたいにいったことがあったけど(とかく威厳がありすぎて…)、まさに、これから誰かが入るためにくらーく口を開けた墓穴なんてなんともはや。全般的にこの中に入っている人たちが望んで入ってるようにも見えないんだけど、まあ別に入ったからフランスの英雄になりきっちゃってるわけでもないからそういうもんであろう。フランスっていう国は、文化の庇護者を自任しているから、あらゆる、例えば権力に対して反抗的な態度のクリエーションも、水準の高いものであればあるほど保護という名のもとに自分の中に取り込んでしまおうとするように見える。ポンピドゥーなんかもそんな施設の最たるものだろうと思う。
 問題は、ヴォルテールやゾラが別にどんな扱いをされようが彼らはお構いもしないし、相変わらず凄いだろうが、これを続けて、例えば100年後とかに「フランス」に人を惹きつけうるような凄い事件みたいな人が、今、登場できるのかなんだろうけれど。「七番目の芸術」とかいって手厚く保護されてる映画で面白いのがでてきてない、というような話も聞いて思うことですが。
 そういや、ポンピドゥーの近代美術館常設展に入ってすぐ、マチスピカソ、ブラックが1940年代に似たような主題で描いた作品が何点か置いてあるところに(特にマチスの、マグノリアのある静物)入って、すぐ隣にいた家族連れの母親が娘に、「Ca, c'est de Matisse. Il est mort.」といって、そのまま次の部屋にどんどん進んでいったのが端的すぎて笑けた。