高校以来久しぶりに、就寝前に次の日着る服を出しておくのが平日の日課になっている。一人暮らしの時は優雅にお化粧しながら着替えたりしてた気がするが、家族がいたり同居人がいると、なんとなくそういうことはしにくい気分になるのである。
 ところで今日は土曜であり、昨夜消耗していたのもあって何も朝をスムーズに迎える支度をしていないので、起きたら早速洋服を出すところから始めなければいけない。少し説明をするなら、私の就寝スペースの上の方に造りつけの白木の棚がぐるっとあって、いともつつましく畳まれかつ修道院のように整頓された洋服とか衣装ケースが並んでいるのですね、従って立ちあがって、その棚から衣装ケースを降ろそうとするんだが、それが出来ない。
 なぜかイタリア人がいるのである。ヴェネツィア画派風のカールした黒髪にちょっとアンニュイな表情はいいとして、少し痩せ型とかもまあいいとして、座って哀れっぽい上目遣いで「うーじゅーらいく さむかぷちぃ〜の?」と何度も何度も同じメロディーで聞いてくるので、洋服の入った衣装ケースにたどりつけない。
 本来の現実世界では同居人が朝早くからすでに一度出かけ、戻ってきて、さらにもう一度出かけたらしい物音を聞きつつ、私は浅い夢のなかで何とかカプチーノ男を飛び越えて洋服を取り出そうとうなされていた。あまりに哀れっぽく現実離れしているので、なんだか気味が悪くてどかせないのである。それでまあ、何とかようやくカプチーノ男なしの現実に降り立ったら、どこか「できた嫁」の風情のある同居人はなんとブリオッシュを買ってくれていたので、私は断固としてミルクなしのアメリカンコーヒーを落とし、パジャマのまま美味しい朝食を戴きましたとさ。
 ていうか明け方の夢って本当にあほっぽくて鮮明。この前は社会勉強のために移動式マクドナルド(ワゴンの屋台みたいな)のバイトに志願して、研修ですでに「あれは彼女の客だから」とかいってめっちゃ注文が立て込んでいるのに動こうとしないフランス人たちに切れていた覚えが。