妹に「ロマンスなくとも素敵なクリスマスを」という有難いのかなんなのか分からない激励をもらってたのですが、ロマンスはともかく完璧なイヴを過ごさせていただきました。
 クレルモン時代のクラスメートを招待したので、フランス風にアペリティフ、前菜、メイン、デザートをやろうとして、スモークサーモンとサラダ、ブフ・ブルギニョンとリヨン風じゃがいものグラタンを作って、デザートは小さいブッシュドノエル。その後ノートルダムのコンサートと深夜ミサに出かけ、別部隊と合流してサンミシェルで少し夜遊びして帰ってきました。
 コンサートと深夜のミサでは、カトリックの懐の大きさに素直に感動した。皆のために、とりわけイラクの兄弟たちのために、そして神に祈らない者たちのために祈ろう、というのは口先だけでなくて、どんだけ観光客が来ようが、荘厳でありながらあくまで人を迎え入れようとする雰囲気が壊れない。後ろのパイプオルガンと内陣の合唱のあいだに挟まれていると、大聖堂全体が音楽を天に届けるためのおおきな楽器であって、その中にいる自分たちの身体もその一部として共鳴しているのが感じられる。そして、コーラスのやんごとない協和音の下でパイプオルガンが重低音で不協和を奏でるのが、まるで理解できない巨大な力が直感的に身体レヴェルでその存在を主張しているようで、かなり怖かった。見えると思っていないものを見せられることを、聞こえないはずのものを聞かせられることを、理解を越えたものを示されることを恐れるな、と説教で言って、その力は私みたいなよそ者でも十分感じられるくらい、感覚的に巨大で不気味なもの(崇高とは便利な言葉を作ったものだ)なのにも関わらず、その神が人間たちみんなに使わした贈り物で最大の奇跡が、私たちが誰でも知っている無力で手のかかる赤子だったというのは、たしかにおもしろい、考えさせられることではある。

 折角なのでレシピ覚書。
 ブフ・ブルギニョンはビーフシチュー(それ用の肉がなんと700gで5ユーロ)。私がイメージに任せて作ったのは、鍋にバターをひいて、大きめに切って面取りしたニンジンと丸ままのマッシュルームと大きめに切った玉ねぎを炒めて取り出す。油を追加し肉に塩コショウと小麦粉をまぶし、ニンニクと一緒に軽く表面を焼いて取り出す。次にその鍋にオリーヴオイルとバターを追加し、玉ねぎ・ニンジン・セロリ・ニンニクをみじん切りにしたものを結構ぐちゃっとなるまで根気よく炒め、もう少しでペーストっぽくなってきたらワインを投入して、鍋に付いたペーストをこそげ落とし、肉とニンジンと玉ねぎを再投入して、ブーケガルニというそれ用のハーブの束を投入し、あとはひたすら煮込む。ワインは3ユーロくらいの、でもそこまで悪くなさそうなコート・ドュ・ローヌを一本!味は適当に整えるが、基本は肉とワインが勝手になんとかなってくれます。みじん切りが終われば後は最高に楽だしご馳走気分になれるのでとてもお勧め。
 リヨン風のジャガイモは、以前フランスのご家庭でご馳走になったときに聞いたレシピとその時の味を思い出しながら。ジャガイモを大量に皮むきし、3-4ミリの薄切りにし、グラタン皿にバターと塩と角切りベーコンを適宜加えつつかさね、牛乳と生クリームを2:1くらいの分量でひたひたまでそそぎ、チーズを振りかけてじゃがいもが柔らかくなるまでオーヴンに放っておく。オーヴンがないのでフライパンにアルミホイルでふたをして弱火で煮て代用したら案外巧く行った。ポール・ボキューズのレシピだそうで、簡単だけどジャガイモの切り方を変えたりすれば十分お洒落な付け合わせになるし、おそらく女子でこれを嫌いな人はまずいない気がするので、是非みなさんやってみましょう。