昨夜は久しぶりの一人暮らしだったので、大音量で音楽をかけて顔パックして小説を朗読みたいな傍若無人な振る舞いに及ぼうと日中からほくそ笑んでいたのに、不覚にもお風呂上がって三秒で眠り込んでしまった。朝は朝で高らかにサウンドオブミュージックを歌いながらムフタール市場で洋ナシを買うつもりが、平日みたいな慌ただしさのなか最後のはちみちを絞りだして空腹をみたし九時四十五分の約束に間に合わせ、午後は気持ちを入れ替えて超有能に版画の一斉調査を続行のはずが、鼻水の急襲を受けた挙句年期の入った木の机に額をついて小一時間ほど気を失っていた。今は、先ほどのギャラリーの開会式での紳士的なお誘いを受けてピエール・カルダンなんとかのイヴェントで大層お洒落な殿方と知遇を得ることも可能性としてはゼロではなかったが、その手の技術はそのうちもっと必要になったとき身につけるとして、今は時間のかかる研究の方にエネルギーを割いておきたい。というか、研究をするにも何にも、やたら眠くて身体が思うように動かない。空が曇って月は見えないが満月だし、早めにおやすみなさい。