帰ってきたことだし早速忙しいんだが(家の電熱器が留守中発火したらしく、同居人が大変だったそうだ!私も昨日豆を煮てたら感電を初体験★した)、合間を縫ってちょっと真面目に美術館紹介をするよ!順不同で、本日はスイスはバーゼル、バイエラー財団美術館。
 バーゼルといっても、少し郊外、リーヘンとの間にある。荷物を置きに宿に寄った時にもらった一日券を使い、トラム六番線に乗っているうちにすでにお花畑が広がるなだらかな丘の景色が見えた。バーゼルのトラムは緑色一色。珍しい。

 バイエラー財団美術館の停車場で降りると、その向かいが美術館のある財団の敷地になっている。

 門を越え、やや散歩道をくぐったところに美術館入り口がある。

 レンゾ・ピアノによる、風景を邪魔しない水平線を意識した簡素な建物。
 次回展覧会の準備のため、入口は裏口を使う。

 裏口の方に降りると、あやめや睡蓮の池に向かって庭から建物の方へ劇場のようにだんだんが降りている。
芝生と色とりどり躑躅や木の花の咲く庭を通り、外の敷地の花畑を見ながら進む。朝の湿気を帯びた空気が甘く、マイナスイオンが半端ない。

 
 ガラス張りの回廊に入る。ガラスは指紋一つなく、どこか無印っぽい生成の帆布張りの八人掛けソファ(!)にもシミ一つない。
 内部は白塗りの壁とガラスを用いたホワイトキューヴに、抑えた色調の木目の床が控えめな高級感を演出♪ってなんか口調がホテルの宣伝みたいになってきたー!自然光を使った照明も白い印象。地下の特別展の一番大きい部屋はこんな感じ。

 広々とした空間を贅沢に使い、20世紀絵画と彫刻の傑作だけがぽつぽつと並列されている。とりわけ彫刻の配置による空間構成は魅力的。しばしばピカソセザンヌといった作者の作品に沿うようにアフリカやオセアニアのプリミティブ彫刻があるのは、今は様々なところで行われているが、この美術館が最初だったとのこと。始めはロスコの部屋。続いて大広間にポロック、バーネット・ニューマンの大作が並び、ジャコメッティの彫刻が垂直線によって空間に有機的なリズムを与える。

撮影は多分禁止なので、ここに挙げた写真はイメージですが(!)、ジャコメッティは効果抜群よね。
 モネの睡蓮の大作のみがソファの前に置かれた部屋もある。あ、あとルーアンの聖堂が横っちょに。ここは大人気なので「イメージ」も提供できません、申し訳ない。壁の一面を占める窓の向こうは、白い薄布のスクリーン越しに本物の睡蓮の池がある。パリのオランジュリー美術館が敢えて作品全体を一つの視野に収めることを困難にするような空間構成で、鑑賞者が否応なく睡蓮の作品の輪の中に入る仕掛けだとすると、ここでは、作品との距離が十分に保たれ、ニュートラルなキューヴのパワーで鑑賞者が完全に作品を客観的に賞味することが許されていると言える。しかもこのモネ1917-20年の水平線がなくなっちゃっている奴であり、隣室の抽象画に負けないぐらい尖がっててかなりいい。あと、個人的にフランシス・ベーコンはまったく興味のそそられる画家ではなかったのだが、ここの作品みたら面白くてもっと知りたいと思った。
 また、作業の様子を公開しているのも特徴じゃないかと思う。常設展の入り口になっている大ホールには次の特別展の作業用模型が置かれているし(模型っていつ見てもわくわくするわね)、地下にはマチスの切り絵を用いた装飾作品の修復プロジェクトがガラス張りの部屋で行われており、進行状況の説明が付けられている。その時間には作業してはいなかったが。地下の総ガラスエレベータを降りてすぐのところにもガラス張りの部屋で修復作業が行われていた。

 おまけ。バーゼル中心街は、「歩いてお散歩コース」が、エラスムス・ルート、ブルクハルト・ルートなど数種類用意されていて、自分でこの案内板のお目当てのおじさんの顔をたどりながら市内をぶらぶらと巡ることができる。

 市場のある中心の広場に立つ建物。かわいい!

 バーゼルを流れるライン川。バイエラー財団とバーゼル美術館を見て、宿でチェックインを済ませた後の長い黄昏の間、エラスムス・ルートをぶらぶらした。