今日はちょうど一週間前に訪れたチューリヒの写真など。チューリヒは、オーストラリアのメルボルンと並んで、世界でも最も気候的に過ごしやすい都市であるとのこと。期待を裏切らない日差しが隅々までピカピカに磨かれたスタイリッシュな街に降りてくる。


 こちらの教会はフラウミュンスターという。シャガールによる縦長のステンドグラスが五本並ぶ素敵な礼拝堂が中にある。写真は禁止なのでお見せできないが(教会では悪いことしませんよ)一本一本、赤、青、黄、緑、空色と基調色を変えているのがシンプルな礼拝堂に映えて効果的。特に緑のヤコブの物語が綺麗だった。ヤコブの梯子は幼稚園の頃から好きな話だ。
 シャガールの他、ここにはジャコメッティによるステンドグラスもある。鮮やかな暖色を中心に細かく割って濃密に配置したガラスは、彼の彫刻の非常に研ぎ澄まされたシンプルな印象と最初結びつかないくらいだが、みているうちにやはりブロンズの表面の。彫刻についても、研ぎ澄ますというよりは凝縮していると言った方がいいのだろうな。

 フラウミュンスターから河を渡ると大教会。

 大教会の入り口の門。

 この門は金属の浮き彫り細工が施されているほか、写真では分かりにくいけれど上の半円の窓が色貴石(多分メノウとか半透明で模様の入った様々な天然石)を並べた装飾になっている。じいちゃんが好きそう…。いわば自然のステンドグラス。

 中は撮影禁止だが、こんな感じで、ジグマー・ポルケによる異素材を使った万華鏡のようなステンドグラスがある。ジグマー・ポルケはドイツの現代アート作家では大家、というか去年に亡くなったのね。プリント布地とかを使い大きな画面にポップで可愛らしくちょっと不気味な意味深さもある、主に具象画を描く人。ステンドグラス作品は今回初めて見たが、対称とか万華鏡みたいのを使った構図が洗練されており、さらに描かれている聖書のエピソードの神学的な解釈に合致するような手法が工夫されていて(すくなくともそのように解説されていて、美術批評としては捻りすぎの感もあるが教会に置いてある解説としては悪くない)何より明るいパステルカラーが新鮮。

 塔に登る。189段とかのせまーーーーい階段を越えると、湖の向こうのアルプスまで見渡せる。

 チューリヒは気候もいいし街も近代的で整っているだけでなく、歴史的な地区も残っていて、自然もすぐ近くにある。とんでもないいいとこどりな街にみえる。塔から降りたら丘の反対側の美術館へ。


 ジャコメッティに地上階の一部ががっつり充てられているほか、ホドラーベックリン、フュースリ、セガンティーニなどスイスゆかりの画家の充実に加え、ムンクのコレクションが目立つので何となく不気味なセレクションかな・・と思いつつ、17世紀オランダ・フランドルの宝石のような小品、印象派〜20世紀絵画なども。ドラクロワの小品、クールベによる不気味に口をあける海岸の洞穴。
 企画展では「foto/skulptur」といって、写真黎明期以来の彫刻の写真にはじまり、ダダとシュールレアリズムの連中の実験とも冗談ともつかない写真作品、最近の何枚もの写真をそれ自体をオブジェのように(つまり彫刻のように)構成して展示する作品までの流れを見せる。結構おもしろかったし、解説に英訳が付いてたのが有難い*1

 美術館から出ると厚い雲が。

 山のふもとにつき天気は変わりやすいが、すぐに好転する。アルプスがまぶしいよ。 

*1:信じがたいけど、常設展はほとんどのところがドイツ語ないしフランス語しか解説がないのだ。お陰でドイツ語読むのの鍛練にはなったけど。あと、スイスの公立美術館は動線のよくわからないところも多かった。この展覧会は、入口=出口で、終わりまで観たら入口に戻らなければいけない。スペースあたり観覧者が少ないからこそ出来る荒技で、歩くのしんどいひとにはきついと思う。私は大抵一回見たら最初っからまたもう一回見たいのだけリピートするので、帰り道で復習できるのは好都合だった