昨日の学会発表では、18世紀フランスにおける、エスキースの意味の変容についてのものがタイムリーで興味深かった。今年度、西洋美術史の、特殊講義とは名ばかりの講読では、ロジェ・ド・ピールの『絵画原理講義』Roger de Piles, Cours de peinture par principesを講読している。風景画の戸外での油彩・水彩スケッチの重要性を説く記述などが前期読んだ部分にあったし、つい先週も着想をとどめておくためのエスキースとエボーシュの違いについて触れたところである。19世紀の絵画ではスケッチ風のタッチをどれだけ残すかは重要な問題のひとつで、参考文献に挙がっていた、少し昔の本だけどAlbert Boimeによる邦題『アカデミーとフランス近代絵画』でも詳しく論じられていた。スケッチ風の絵画という問題を色彩論争と絡めてちゃんと手札にするには、18世紀のアカデミーの状況から一応さらっておいたほうがよさそう。