寒くなってきた。大学で多分一番暖かい付属図書館に居座り、昼寝したり本を物色したり、平和な日々である。
 暇ができるとまず訪れるのはヴェネツィア

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)

ちまちま読んでたのがやっと下巻に突入した。塩野七生さんの文章や考え方は、たくましく潔いと同時に色気がある。ひとりの生身の女のままで、世界と歴史に向かい合って負けてない。憧れ、言ってしまえば目標のひとのひとりである。
須賀敦子のヴェネツィア

須賀敦子のヴェネツィア

文学部の閲覧室に珍しく俗っぽい(というほど通俗的ではもちろんないけれど)ものがあるのにちょっと嬉しくなって借りた。須賀敦子も今年は結構読んだので、少しずつ思い出しながら、くすんだ風景の写真を眺める。仏文の吉田城先生遺贈、とシールが貼られていることに気付いたのは家に持ち帰ってからのことだ。一番上に押された自分の返却期限に、恐れ多くも縁のようなものを感じて見たりする。
 
エリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉1936‐1955

エリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉1936‐1955

夏に読みたいのは重いテーマの長編(今年だと『ナウシカ』の原作になっちゃうんだろうか、いや、他になんかあったはず・・)だが、冬は少し印象的な短いものがしっくり来る気がするのだ。映画を撮ったり、雑誌の編集を通して身近な人の文章に触れたことで、描写について意識的に考えるようになった気がする。練り上げられた小説には、色々と盗むべきものがありそう。お話とその表現という問題は研究を通しても考えていきたいテーマである。などなど、言い訳はいくらでも出来る。本当は、ルーマニアの森の奥深くにひそむ影と、眠りに入る前の幸せな時間を共に過ごしたいというだけなのだけど。