だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、本当はそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。
谷崎潤一郎『陰翳礼賛』


 関東関西から集まった知的美女たちに畏れ多くも仲間に入れていただき、ジェームズ・タレルのhttp://www11.ocn.ne.jp/~jthikari/index.htmlに泊まってきた。重たい雪の降る夜、ほの暗い間接光のもとで鍋と地酒を頂き、トランプに興じる。もちろん羊羹も。漆黒の浴場で水面下に青白く発光する裸体はどこか抽象的でファンタジーだった。音声さえなければ詩的といっていい。

 朝には天井が開いた。


 帰りは金沢の21世紀美術館で遊んだ。充実した北陸の旅でした。