一週間で同じ美術館に二度行くのも京都ならではの贅沢。夜は『鈴木昭男&ロルフ・ユリウス』の行われている京都国立近代美術館の昼間の展示『アール・デコのジュエリー』展を観る。
 ダイヤをふんだんに使ったブローチがガラスケースの中に三点。「どれにする?」といきなり隣で声がした。「私、これ。」思わず振り向くと午後の優雅なひと時を楽しむ上品なご婦人二人連れ。同じことを考えていたためにやりとしてしまったのを、あちらも気付いたのだろう。「あら、恥ずかしい・・」と顔を見合わせて微笑んでから、「あなたは、どれ?」。聞かれてしまった。うーん、この三つでは、さっき選んでらしたのと同じ、このスミレのかなあ、でもあっちの、色石のもよかったな。アクアマリンのティアラも捨てがたい。どっちにしよう・・。
 つかのま、夢見る少女が三人。いいじゃないですか。
 鳥とか果物、花をまとめたデザインの、色石や七宝を使ったものも素敵だった。照明の関係か、ダイヤは言うまでもないが、翡翠の煙るような緑白色が不思議に綺麗。翡翠は、宝石鑑定のプロにも50%の確率で失敗は許されるという、とても判別の難しい石だとか。昔読んだもので真偽は知れないけれど。『ギャラリーフェイク』に出てくる、宝石泥棒で自らデザインとカッティングを行ったジュエリーショップの店主でもある妖艶な美女の名前は翡翠(フェイツィー)というのだった。