ピュイドドームを越えたところの小さな村で、村全体を会場にして各国の「クレーシュ」を展示していた。キリスト生誕の場面を人形で現したもので、三人の東方の賢者達(マギ)も少し早めに到着している。らくだと牛が欠かせない。幼稚園の時のクリスマス会を思い出すな。私は二年ともお星様だった。お遊戯会のヘンゼルとグレーテルではチョコレートだった。赤頭巾ではお花だった。小学校一年生で少し成長して大きな蕪の蝶になれた。いまもぼんやりしてるけど当時もよほどぼんやりしてたんだろな。なんて、ここへ来て最初の挫折を思い出す。

 ノエルの怒涛のプログラムは無事に過ぎ去った。私は結構わが身を持て余して独りになりたくなって散歩に出てたりしたけど(この辺も日本の正月と変わらない)。
 マルガレットが「今年もノエルは始まったらあっという間におわっちゃったわね」と今朝言ったのを聞いて、ああ、この人たちは、毎年こうしてノエルを過ごしてきて、これからも同じように祝うのだな…、自分が見てきたばかりのお話の中のような出来事の後ろにある途方もなく大きな世界が実感されてなんかものすごい淋しさのようなものをおぼえる。私はそこをちらっと通りかかっているだけで、そんなことを感じてしまううちは、バナナ*1にならずに済みそうだな、なんても思うけど、でも通りすがりなりにこの世界に交差する機会を得ておいて私はこの一期一会に何をしているのだろう。

*1:皮が黄色で中身が白。何かで読んだ。留学生としては素直にバナナを目指したほうが賢い気はするけど。