本日よりシリーズでクレルモン旧市街にあるカテドラル、聖母被昇天教会をご紹介します。大聖堂界隈はどこの街もそうみたいですが、狭い道に古い建築が比較的よく残る、雰囲気のある散歩道になっています。近くにはこじんまりとしたレストランやビストロが点在します。お洋服や雑貨のお店が並ぶメインストリートを通って西面のファサード(建物の顔)から参りましょう。
 こういうトトロの角のにょきにょきっと伸びたような塔が正面に二つ並んでるのは、中世の、ゴシック大聖堂によく観られる特徴です。ゴシックという様式はだいたい12世紀から14世紀くらいに建てられました。
 
 ゴシックの様式は、ファサードより後ろの方の方が分かりやすいのでその時に簡単に説明を試みますが、宗教建築なんだけど、安心するとか守られてるとかではなく、口あけて呆気に取られるような、荘厳ではあるのですが、それは、がーんと衝撃を受けて私負けましたーという感じのする建物です。どうやってやったのか、何でそうしなきゃいけなかったのか、さっぱりわからんくらい高いです。
 
 でも残念なことにこの大聖堂のファサードは19世紀のものです。もともとはトトロの顔はついていなかったのです。
 19世紀半ばに、革命、経済的混乱そして火事なんかでフランスの古い建物が危機的状況にあった時に、それらを「国の財産→文化財」としてリストアップして保護するというミッションを受け持ったのが、文学者のメリメと建築史家のヴィオレ・ル・デュックのコンビでした。このデュック爺はフランスの建築に関して重要な著作を残していて、建築をやるなら避けて通れない子泣き爺ですが、彼には建築の修繕に関して譲れない信念がありました。それは「建物は完璧な理想的な状態で残すべきだ!」というもの。もし、完全な状態だったことなんか過去に一度もなかったとしても、です。
 大老殿にとっては、ファサードのないカテドラルなど、許されません。「こんなんだったら完璧になるに違いない!」って、作ってしまいました。それが今残っている西面ということになります。
 いうまでもなく、他の部分はもっと昔からありました。次回ご紹介しましょう。
 あ、ほぼ聞いた話なので、もし不正確な部分があったらご指摘いただけると幸いです。