フナックのくだりのエスカレーターですれ違いざまに男の子が私の足元で躓いた。もしや運命の出会い?と思う間もなく走り抜けていき、上では感動の再会が繰り広げられる。でもまてよ、なんで「エスカレーターですれ違う」なんて状況が起こるんだ?気づくと前のカップルがこちらをみて笑っていて、私もつられて笑う。ガラスのドアをふたりで観音開きにしてくれた。ありがとう、と言って通ると、声を揃えて「ようこそ、不思議の国へ!」ああ、そうか。みんな半分スクリーンの中にいるのだ。変てこな映画を観続けた町全体がスクリーンに蝕まれていく。なんて素敵!私だってたった今頭の中にワーグナーが響き渡っていた。荘重な音楽で描かれた陳腐な日常はベルギーの作品で感心したばかり。
 初めてフォアグラのポワレを頂いた。うーん。世に美味しい物は数あれど、ふわっと溶けるはずがないくらい濃厚なのに甘く儚く消え、紛れもなく動物を食べている感覚と上品な風味が両極端なはずが最高に共存していて、これを地上で食べてしまっていいのかしら。これだからフランスは最高!それから牛の腎臓をマスタードのソースで。内臓続きに今気づいた。そんなに血を濃くしてどうするんだ。