二泊でカンヌ映画祭のフィナーレを観て来た。観て来た、とはいっても、私は単なる野次馬なので、映画が見られるわけではなく、浮いた街の様子とか着飾った男女を観て、レッドカーペットを歩いてパレという会場に向かう有名人を眺めたり、海岸沿いをぶらぶら歩いて、「ジャックスパロウ船長になってみよう」の写真撮影セットに顔を突っ込んでいる上品そうな老夫婦を冷やかしたり、自ら顔を突っ込んでみたりと、いたって適当に過ごしてきた。写真は、よく見れば閉会式の会場に向かうカトリーヌ・ドヌーヴが写っている、はず。

 最後の最後に、日曜夜、友達が映画を出している(というとかなり格好よさげだがそう凄くもないらしいけどここはそのまま書いておこう)ことが発端になって、紆余曲折を経て、コンペティション部門の最終上映を見られることになった。カトリーヌ・ドヌーヴとかショーンペンとかナタリーポートマンとかがいたパレで、である。
 コンペ部門というのは目玉らしく、ソワレ着用なのだが、友達は蝶ネクタイを持っていないし、私もドレス持って来てなかったからとてもヴァカンスって感じの気の抜けたサンドレスで誤魔化すしで、思わずお祭りに精一杯のお洒落で繰り出した中学生の頃を思い出したけど、無事入れてもらえた。中には案外カジュアルな人もいた。これぞオートクチュールでございますってかんじのキラキラしたものが色々ついたものすごいドレスを引きずってるお嬢さんもいたけれど。若い子は、肌見せればokという感じで、そこまで凝ったものは目に付かなかったけど、それなりの人になると、気の抜けた格好したら、あのひとも終わりね、みたいに思われるのだろう、大変だ。レッドカーペットは、もけもけが高級とかよりも、上から当てられる光量が半端でなく、フラッシュが当たり続けているような感じだった。確かに歩けばお姫様気分。 

 海岸沿いにはライトアップされたやしの木、高級ホテルと客船が並び、ホテルの出している浜辺のテントでは夜な夜なパーティーが行われている。文句なしの脚線美を扇情的なピンヒールにのせて完璧に歩く美女たちをエスコートする美男子たち(どっから出てきたんだーと思うくらいいるのである)。こんな絵に描いたようなきらきらの世界は夢を売る商売にこそ相応しい。レッドカーペットを進む姿は、会場のスクリーンの上で見るほうが生よりリアルだ。
 こういう世界があるのね、といいながら、素朴なピザをたらふく食べて、ロゼを一本空けた。