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とても硬いのにしなやかで、水晶のようでありながら流れるようで、動くたびに絹は羽根のように色合いを変え、孔雀のように緑から青へ、それからまた黒へと変わった。彼女は腕を持ちあげて、たっぷりした袖を下へ垂らして大きな翼のように広げ、そのまま手を頭へまわして、編んだ髪から、男の心臓を肋骨越しに突き刺せるほど長い青銅の櫛を抜いた。外の雨と、背中に感じる火の熱と、肌に感じる絹が、彼女を自然に返した。
- 作者: ジョン・アップダイク,河合祥一郎,John Updike
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2002/05
- メディア: 単行本
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