ラヴェンナにて。友達は、イタリアって憎めない感じやろ、という。ものすごい便利な先進国って感じじゃないけど美味しいものがあって、いつもいい天気で、美しいものが残っていて、必ずしも要領がよくはないけれどみんな人懐っこくて。みんな、私を好きになってー、にこにこー!みたいな、と。そうか。うーん、言われてみればそうかも。
 私が特に気に留めたのは、服装で、男子のお洒落な格好といえば、肘のぎりぎり隠れるところまで腕まくりした長そでの身体にあったシャツをノータックのパンツにイン、女子も圧倒的にひらひらスカートに華奢サンダルだった。つまらないくらいに王道で、さすが保守的、カトリック、なんて思ってたものだ。それは、揺るがないってことかもしれない。女の子はカワイイものなんだから可愛いカッコしたらよろしい。綺麗なものは綺麗、美味しいものはおいしい、いいことはいいこと。ひねくれる必要なんかない。そんな、はっきり割り切れた明るさだった。

 前に触れた『ガートルードとクローディアス』では、ガートルードの前夫ハムレットがばりばりヴァイキングな北欧の男だったのに対して、クローディアスは、若いころから世界中を周っていて、ビザンチンをはじめとする東方や地中海世界の冒険談と鮮やかで濃密な南の空気で、暗く湿ったエルシノアに飽いた王妃を引き付けることになっていた。
 そういえば、フランスにいたとき、『ビギナーのためのイタリア語』というような題のデンマークの映画をDVDをみたが、これは日々の生活に押しつぶされかけたり恋に破れそうだったりする男女がイタリア語を勉強してるうちになんかうまくいくようになって、最後はラヴ・アクチュアリー顔負けのご都合主義的なハッピーエンドが訪れるというしょうもないコメディだったけど、生き別れの姉妹が片っぽづつ面倒を見ていた両親が丁度よく亡くなるのをきっかけに出会えて幸せになるってのが面白いと思った。
 ハムレットも、イタリアといかないまでも、ドイツの大学都市なんかじゃなくレアティーズといっしょにパリにでも行ってれば、もう少し幸せになれたかもしれないのにねえ。