うつらうつらと画集をめくっていたら

 ムリーリョの≪聖ヨハネに水を与える幼児キリスト≫(1675-80)マドリードプラド美術館蔵。
 前に見た時は子供ばっか見てたけど、この子ひつじ、なんて可愛いの!!
 これ、以前スルーしていたのにいきなり愛おしく思えるのは、全く美術史家失格な理由だけど、賭けてもいい、「犬好き」に改宗したからだ。
 小さい頃から、四つ足の獣といえば大きくて怖いものという考えしかなかった(牛の集団に舐めるように見られてごらんなさい)。学校帰りにつながれていない白い雑種犬とにらみ合いになったときは悪夢だった。それなのにうちのミニチュアダックスときたら、三年前一瞬にして心を溶かし、前足の指の間のふよふよの毛、転がっているときに無造作に伸びた後ろ脚、二重あごスポットに少し余った皮、たまに考え深そうな眉間、コケットな尻尾といった数々の美点を余すことなく発揮し、この夏はついに一緒に寝られるくらいにまで私の警戒を解いてきたのである。以前は犬を触りたいなんてちっとも思わなかったけど、今は、窓の下に見える訓練所のよく吠える馬鹿犬すら、ふくふくとした気分で見守っている。
 ムリーリョの子ひつじは、抱っこしたくなる気分に溢れている。関節がまだ柔らかくて、毛も頼りない。でも温かくて弾力があって、ちょっと乳臭いはず。「ぎゅっ」と抱きしめたい!と思わせるように描かれているかそうじゃないかは、ぎゅっと抱きしめた感触をリアルに知らないと難しいのかも。そして、そう思う私というのはまたえらいこと、立体の次元の人間なのかもしれない。