早起きして、新京極のシネラリーベにてターセル*1落下の王国』。自棄になってやったスタントの失敗で半身不随になった男が、入院している女の子に物語を聞かせて、自殺するための薬を持ってこさせようとする。
 語られるのは、世界の名所旧跡絶景を舞台に繰り広げられる愛と復讐の叙事詩。黒人の解放奴隷・チャールズダーウィン(語学の天才)と相棒のサル・もと傾国の美女の夫インド人(飛び道具は苦手)・爆薬技師・マスクをかけた謎の山賊に呪術師(力の源は入れ歯)が加わって悪のスペイン総督オウィディウスを打倒さんとする。いわゆるお伽噺なので、ファンタジーとして密度の濃いものではないなら、いっそもっと破天荒な筋でもよかったんじゃないかとは思う(うっそだろーって笑っちゃうのもあるっちゃあるけど)。でも後半になるに従って、少女アレクサンドリアの日常とお話の中とが彼女のなかで混乱してくるあたりは説得力があった。最後のほうは、もう少し現実とお話とのリズムでぐぐっと引きずり込んでくれないと、無駄に湿っぽいような気分になってしまう。
 どこか少年漫画ちっくに妙にキャラの立った勇者たちは紋切り型的で楽しく、イスラムやインドの誇大妄想系の建築に、黒服に鎧で揃えた悪者たちがざらざら動いているのは圧巻で(世界史選択の皆さん、あのスーフィーが見られるのよ!)、無駄にアクロバティックな映像もいい。なんだかんだ、今日中ベートーベンのたーたたたーたーってのが頭から離れないのだった。

*1:でなくどうやらターセムであるらしい。