モロッコのホテルでの朝食。基本的にはフランス風の甘いラインナップで、生搾りオレンジジュースにミルクコーヒー、ジャムや蜂蜜とバターとパン、それにオリーヴの油漬けが付く。フェズで泊まった宿では目玉焼きが加わる豪華版だった。パンは、クスクスの粉をつぶしたような黄色い荒い粉を使ったホットケーキのようなパンや、「むらすずめ」のようなぽこぽこと穴のあいたパンケーキ、薄いクレープの重なったデニッシュのようなパンで、特に最後のはポケットに入れて帰りたいくらい美味しい。



 全体的に、砂漠ツアーを中心に暑さに弱い私は随分消耗したのだが、モロッコはかなり旅行先としてお薦めできるな〜というのが結論だ。
 第一に、経済的にお手軽。これは日本発着なら飛行機代は必ず一定以上かかってしまうけれど、とにかく現地に入ってしまえば、ヨーロッパではドミトリーを泊まり歩きサンドイッチ詰め込んで腹を満たすくらいの、いやそれ以下の予算で、まったりお嬢さんなバカンス気分が味わえるので大変お得感がある。
 第二に、手軽に別世界感覚が味わえること。治安にそれほど不安が無く、フランス語は完璧に、英語もかなり理解してもらえる、という安心な環境ながら、アラブのイスラム文化ベルベル人たちの砂漠世界という完全なる異世界に迷い込むことが出来る。スークという迷路のような市場の中では職人が立ち働き、荷物を背負ったロバが行き交う。いちいち値切り交渉をしなければならないのは、だんだんと面倒になってくるが、現地の人々のやり取りを聞いたり、前回の失敗を生かして次の交渉では少しスマートにコミュニケーションが取れたりと、ゲームのような面白さもある。ほこりっぽい空気と強烈な日差しに女性たちの普段着なのにきらびやかなローブがまぶしく映える様子は圧巻。
 さらに、この別世界は、ヨーロッパや日本とはかなり違う、しかしながら繊細な美意識に支えられているようで、太陽と砂をやり過ごすためだけに作られたようなそっけない外観の建物に入った瞬間豪華な装飾が広がるのは一見の価値があるし、銀細工、織物、モザイクなど、楽しい誘惑が沢山ある。